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岡崎体育「感情のピクセル」】

 

岡崎体育 『感情のピクセル』Music Video - YouTube

「感情のピクセル」は、従来のコミックソングとは一線を画している。笑いの点でかなり高度なのだ。
そもそも、笑いは「共感」と「裏切り」に二分される。曲の展開を歌詞で説明する「explain」や、ミュージックビデオあるあるを歌った「MUSIC VIDEO」など、元々岡崎が得意としてきたのは「共感の笑い」であった。そこに本作は「裏切りの笑い」を加えてきた。曲調、歌詞、MVの雰囲気までラウドロックに寄せて「あるある!」と思わせておき、サビの「どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわい」という意外性のある歌詞で壮大なフリボケをかます。それ以降もストーリーに添いつつ小ボケを繰り出す。「あるある」と「なしなし」を共存させることで莫大なおもしろみを生んでいるのだ。さながら質の高いコントであり、ここまで緻密に練られたコミックソングはそう存在しないだろう。
それだけではない。正反対の「裏切り」現象が起こりうるのも興味深い。従来の曲を知るファンはサビまでは肩透かし、サビ以降を期待した展開だと感じる。リスナーの性質によって捉え方の変わる、二重の裏切りを仕掛けているのだ。
楽曲としてのクオリティも高い。ラウドロックを真摯に研究した上でのリスペクトを感じるオマージュに仕上がっている。
2017年のエンタメシーンにおけるトレンドは「マルチ」と「キャッチー」である。近年は、又吉直樹星野源など、本業にプラスした才能を持つタレントがブレイクしている。
また、カリスマよりも、弱みをさらけ出す等身大のキャラクターに人気が集まる風潮がうかがえる。この点、岡崎は大きな可能性を秘めている。その自虐的なキャラクターと笑いのセンスで、着実に活躍の幅を広げている。
『感情のピクセル』は、コミックソング史を変革すると同時に、岡崎体育の名を世に広く知らしめる一曲となるだろう。

 

 

◽︎ッキング・オン受けたとき書いた作文。落としたやつ絶対シバく。